繰上返済

住宅ローンの一括返済:必要な資金・手数料・抵当権抹消

住宅ローンを一括返済すると減る利息を残高・金利別に計算し、残高以外に必要な資金、一部だけ残す場合との差、完済で止まる控除と保障、完済後の抵当権抹消の手続きまで順に整理します。

この記事のポイント

  • 一括返済で減るのは、これから払う予定だった利息(残高800万円・残り10年・1.5%なら619,909円)
  • 当日に必要な資金は残高だけでなく、繰上返済手数料や経過利息、抹消登記の費用も加わる
  • 600万円だけ期間短縮型で繰り上げた場合、全額返済との利息の差は36,899円だった
  • 抵当権の登記は完済しても自動では消えず、法務局への抹消登記の申請が必要

一括返済で減るのは「これから払う利息」

住宅ローンを一括返済(全額繰上返済)すると、これから支払う予定だった利息がすべてなくなります。計算例として、残高800万円・残り10年・年1.5%(仮定)のローンなら、そのまま返し続けた場合の残りの利息は619,909円です。一括返済にはこの利息を払わずに済む効果があり、同時に残高800万円と手数料などを一度に用意する必要があります。

一括返済しない場合の毎月返済額と残りの利息(計算例)
残高・残り期間年利(仮定)毎月の返済額残りの利息
800万円・10年0.6%68,704円244,338円
800万円・10年1.5%71,834円619,909円
800万円・5年0.6%135,377円122,569円
800万円・5年1.5%138,480円308,713円
1,500万円・15年0.6%87,161円688,773円
1,500万円・15年1.5%93,112円1,759,948円

残り期間が短く金利が低いほど、一括返済で減る利息は小さくなります。残り5年・年0.6%なら、800万円を一度に払っても減る利息は122,569円です。

逆に、残高1,500万円・残り15年・年1.5%のように残りが長く金利が高い条件では、残りの利息は1,759,948円になります。一括返済の効果を考えるときは、まず返済予定表で「これから払う利息の合計」を確かめることが出発点になります。

残高・残り期間・金利別の残りの利息(一括返済で減る額)
  1. 800万円・5年・0.6%12.3万円
  2. 800万円・5年・1.5%30.9万円
  3. 800万円・10年・0.6%24.4万円
  4. 800万円・10年・1.5%62万円
  5. 1,500万円・15年・0.6%68.9万円
  6. 1,500万円・15年・1.5%176万円

元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。

グラフの数値を表で見る
残高・残り期間・金利別の残りの利息(一括返済で減る額)
条件毎月の返済額総返済額利息の合計
800万円・5年・0.6%135,377円8,122,569円122,569円
800万円・5年・1.5%138,480円8,308,713円308,713円
800万円・10年・0.6%68,704円8,244,338円244,338円
800万円・10年・1.5%71,834円8,619,909円619,909円
1,500万円・15年・0.6%87,161円15,688,773円688,773円
1,500万円・15年・1.5%93,112円16,759,948円1,759,948円

必要な資金は残高だけではない

一括返済の日に用意するお金は、その時点の元金残高に加えて、次のようなものが考えられます。

  • 繰上返済の手数料:全国銀行協会は、繰上返済の手数料が1回あたり無料から数万円まで違うと案内しています。全額返済の手数料が一部繰上返済と同じかどうかも含め、契約で確認します。
  • 経過利息:住宅金融支援機構は、借り換えで前の住宅ローンを全額繰上返済する場合に発生する費用として、繰上返済手数料と経過利息を挙げています。完済日までの利息に当たるもので、計算方法は金融機関ごとに確認が必要です。目安として、800万円に年1.5%の1か月分の利息は約1万円です。
  • 抵当権抹消の費用:抹消登記を司法書士に依頼する場合、その費用は自己負担です(後述)。申請にかかる費用は法務局の案内や司法書士の見積りで確認します。

完済日によって必要な金額は変わるため、金融機関に一括返済を申し込む際は、完済日と、その日に必要な金額の内訳を確認してください。

全額か、一部を残すか:差額を計算する

一括返済できるだけの資金があっても、全額を使うかどうかは別の判断です。残高800万円・残り10年・年1.5%のローンに、600万円だけを期間短縮型で繰り上げると、減る利息は583,010円で、残りの200万円は29か月(2年5か月)で返し終わります。全額返済の619,909円との差は36,899円です。

言い換えると、この例では200万円を手元に残す代わりに、約3.7万円の利息を余分に払うことになります。同じ600万円を返済額軽減型で繰り上げると、残り10年のまま毎月の返済額は17,959円になり、減る利息は464,978円です。手元に残したい金額と、毎月の負担をどこまで下げたいかによって、選び方が変わります。一部繰上返済の型の違いは期間短縮と返済額軽減の比較を参照してください。

残高800万円・残り10年・1.5%で600万円を繰上返済
  1. 繰上返済なし62万円
  2. 期間短縮型3.7万円
  3. 返済額軽減型15.5万円

元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。

グラフの数値を表で見る
残高800万円・残り10年・1.5%で600万円を繰上返済
方法利息の合計毎月の返済額返済期間
繰上返済なし619,909円71,834円10年
期間短縮型36,899円71,834円2年5か月
返済額軽減型154,931円17,959円10年

完済で止まるもの:住宅ローン控除と保障

住宅ローン控除は、年末残高等に0.7%を掛けて計算します(国税庁)。年の途中で完済すると、その年末の残高はなくなるため、その年以降の控除の計算の基になる残高もなくなります。たとえば年末残高800万円なら、0.7%は56,000円です。控除期間が残っている場合は、一括返済で減る利息と、受けられなくなる控除額の両方を並べて考えます。

また、住宅ローンと一緒に加入している団体信用生命保険などの保障の扱いも確認が必要です。住宅金融支援機構は、借り換えの場合に前のローンの団体信用生命保険の保障が終了すると案内しています。一括返済でローンがなくなった後の保障がどうなるかを契約先に確認し、必要なら別の保険の見直しも検討しましょう。

完済後は抵当権の抹消登記を早めに

全国銀行協会によると、住宅ローンを完済すると、抵当権の登記を抹消するための書類が一般的に金融機関から送られてきます。抵当権の登記はローンを返し終わっても自動的には消えず、不動産の所在地を管轄する法務局に抹消登記を申請する必要があります。登記が残ったままだと、その不動産を担保に新たな融資を受けにくくなるなどの不利益が生じる可能性があります。

送られてくる書類(委任状や解除証書など)には、紛失・汚損しても再発行されないものがあり、その場合は特別な手続きが必要になることもあります。申請書は自分で作成し、様式は法務局のウェブサイトから入手できます。法務局の窓口には用紙が置かれていない点や、法務局が申請書の作成を代行しない点にも注意が必要です。司法書士に依頼することもでき、その費用は自己負担です。書類の日付欄や不動産の表示欄が空欄の場合は、自分で記入が必要なこともあります。

一括返済の手順チェックリスト

  1. 返済予定表で現在の残高と残りの利息を確認する。
  2. 金融機関に一括返済の手数料、申込期限、完済日、経過利息の扱いを確認する。
  3. 住宅ローン控除の残り年数と、受けられなくなる控除額を見積もる。
  4. 完済後も手元に残す生活資金を決め、全額か一部かを決める。
  5. 団体信用生命保険など、ローンに付いていた保障がどうなるかを確認する。
  6. 完済後に届く抵当権抹消の書類を保管し、早めに法務局へ申請する(または司法書士に依頼する)。

手順の途中で迷った点は、メモにして金融機関や法務局の手続案内で確認すると、二度手間を減らせます。

一括返済と一部繰上返済をツールで比べる

繰上返済シミュレーションで、繰上返済額に現在の残高と同じ金額を入れると一括返済、少ない金額を入れると一部繰上返済の結果を確認できます。手数料も入力すると、必要な資金の合計と減る総支払額が表示されます。残りの利息の内訳を年ごとに確かめたい場合は、金利上昇シミュレーションの返済表で、現在の金利のまま返し続けた場合の年別の利息を確認してください。返済の後半ほど利息の割合が小さくなる理由は元金と利息の割合の推移で説明しています。

参照した情報

本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。