この記事のポイント
- 控除額が同じ年の利息を上回るかは、金利だけでなく控除限度額と所得税額で決まります。
- 4000万円・ZEH水準の例で、2年目に控除額が利息を上回るのは金利0.5%の場合だけです。
- 13年間では、金利0.5%で控除額が利息を806,671円上回り、1%では利息が1,322,893円多くなります。
- 控除はその年の所得税額と、住民税の上限(97,500円まで)の範囲でしか受けられません。
同じ年の利息より控除額が大きいかは、金利と限度額で決まる
住宅ローン控除の額は年末残高×0.7%(控除限度額まで)なので、ローンの金利が0.7%より低いと、1年間に払う利息より控除額のほうが大きくなることがあります。これを「逆ざや」と呼ぶことがあります。ただし実際には、控除限度額と、その年の所得税額・住民税の上限が控除額を抑えるため、金利だけでは決まりません。
計算例として、2026年4月に4000万円を35年返済で借り、新築のZEH水準省エネ住宅(控除限度額24.5万円)に入居したとします。2年目(2027年)に払う利息は、金利0.5%なら194,093円で、控除額245,000円のほうが50,907円大きくなります。金利1%なら利息は389,189円で、控除額を144,189円上回ります(金利は計算のための仮定です)。
金利別に、2年目の利息と控除額を比べる
1年目は4月の借入れのため返済が8回分しかないので、12回分そろう2年目で比べました。
| 金利(仮定) | 2年目の利息 | 年末残高×0.7% | ZEH水準の控除額(24.5万円まで) | 省エネ基準適合の控除額(14万円まで) |
|---|---|---|---|---|
| 0.5% | 194,093円 | 267,700円 | 245,000円 | 140,000円 |
| 0.7% | 272,018円 | 268,100円 | 245,000円 | 140,000円 |
| 1.0% | 389,189円 | 268,700円 | 245,000円 | 140,000円 |
金利0.7%でも、2年目の利息(272,018円)は残高×0.7%(268,100円)をわずかに上回ります。利息は年の初めからの残高にかかるのに対し、控除は年末の残高で計算するためです。さらにZEH水準では控除限度額24.5万円が上限になるので、この例で利息を控除額が上回るのは金利0.5%の場合だけです。省エネ基準適合住宅(限度額14万円)では、金利0.5%でも利息のほうが大きくなります。
13年間の合計で見るとどうなる?
2026年から2038年までの13暦年に払う利息の合計と、13年間の控除額の合計を比べると次のとおりです。
| 金利(仮定) | 13暦年の利息合計 | ZEH水準の控除額合計 | 省エネ基準適合の控除額合計 |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 2,107,629円 | 2,914,300円 | 1,820,000円 |
| 0.7% | 2,966,980円 | 2,928,700円 | 1,820,000円 |
| 1.0% | 4,272,793円 | 2,949,900円 | 1,820,000円 |
ZEH水準・金利0.5%では、13年間の控除額が利息を806,671円上回ります。金利0.7%ではほぼ同じ水準で、1%では利息が1,322,893円多くなります。控除額の合計が金利によって少し違うのは、金利が高いほど元金の減り方が遅く、年末残高が大きく残るためです。
2026年4月入居・35年・元利均等、特例対象個人に当たらない場合。所得税額の上限は考慮していません。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| 年 | 年末残高 | 控除額 |
|---|---|---|
| 2026年 | 39,301,632円 | 245,000円 |
| 2027年 | 38,249,705円 | 245,000円 |
| 2028年 | 37,192,507円 | 245,000円 |
| 2029年 | 36,130,011円 | 245,000円 |
| 2030年 | 35,062,191円 | 245,000円 |
| 2031年 | 33,989,019円 | 237,900円 |
| 2032年 | 32,910,469円 | 230,300円 |
| 2033年 | 31,826,513円 | 222,700円 |
| 2034年 | 30,737,125円 | 215,100円 |
| 2035年 | 29,642,281円 | 207,400円 |
| 2036年 | 28,541,947円 | 199,700円 |
| 2037年 | 27,436,099円 | 192,000円 |
| 2038年 | 26,324,709円 | 184,200円 |
限度額を超える残高部分の利息は、控除と関係なく払い続ける
控除限度額24.5万円は、年末残高3,500万円分の0.7%にあたります。4000万円の例では、残高のうちおおむね3,500万円を超える部分は、控除の計算では限度額の外側にあり、その部分にかかる利息は控除と関係なく払い続けることになります。金利0.5%なら、500万円分の利息は年におよそ2万5千円です。
このため、「逆ざや」を考えるときは、ローン全体の利息と控除額を比べるだけでなく、どの残高までが控除の計算に効いているかを見ると、繰上返済や借入額の判断に使いやすくなります。省エネ基準適合住宅(限度額14万円)なら、2,000万円を超える残高部分が限度額の外側です。
- 金利0.5%
- 金利1%
横軸は借入れからの経過年数です。ZEH水準の控除限度額24.5万円は残高3,500万円分の0.7%にあたります。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| 経過 | 金利0.5% | 金利1% |
|---|---|---|
| 0年後 | 40,000,000円 | 40,000,000円 |
| 5年後 | 34,705,063円 | 35,105,769円 |
| 10年後 | 29,276,113円 | 29,960,716円 |
| 15年後 | 23,709,756円 | 24,551,978円 |
| 20年後 | 18,002,516円 | 18,866,054円 |
| 25年後 | 12,150,827円 | 12,888,728円 |
| 30年後 | 6,151,028円 | 6,605,069円 |
| 35年後 | 0円 | 0円 |
控除額が利息を上回っても、所得税額が上限になる
上の比較は、控除額を全額使い切れる前提です。実際には、控除はその年の所得税額までで、引ききれない額は前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(97,500円が上限)まで翌年度の住民税から差し引かれます(総務省)。所得税額が少ない人は、計算上の控除額をすべて受けられず、利息との比較も変わります。
また、変動金利の場合は金利が見直されると利息も変わりますし、控除期間(この例では13年)が終われば控除はなくなります。「逆ざやだから得」と単純に考えるのではなく、自分の所得税額、金利が上がった場合の返済額、控除期間が終わったあとの返済も含めて見ることが大切です。金利が上がった場合の返済額は金利上昇シミュレーションで確認できます。
繰上返済を考えるときに、この比較が関係する理由
繰上返済をすると、その後の利息が減る一方で、年末残高も減るため控除額が小さくなる場合があります。ここで、残高×0.7%が控除限度額を上回っている年は、少しくらい残高が減っても控除額は限度額のままで変わりません。限度額を下回っている年は、繰上返済した額×0.7%程度、控除額が減ります。
減る利息はローンの金利で、減る控除は最大で0.7%なので、どちらが大きいかは金利と、残高が限度額に届いているかで変わります。手元資金を減らすことの影響も含めて、一律の答えはありません。具体的な比べ方は繰上返済と住宅ローン控除で、減る利息は繰り上げ返済シミュレーションで計算できます。
比べる前に確認したい前提
- 自分の金利:契約書や返済予定表で、今の適用金利と、固定か変動かを確認します。
- 住宅の区分と控除限度額:区分によって限度額が大きく違い、比較の結論も変わります。
- 年末残高:控除は金融機関が発行する年末残高等証明書の残高で計算します。
- 所得税額と住民税の上限:控除額を使い切れるかどうかを確認します。
- 控除の要件:年末まで住んでいること、合計所得金額の上限など、毎年の要件を満たしている必要があります。
控除額の計算方法は住宅ローン控除の計算方法で説明しています。
自分の条件で利息と控除額を並べる
住宅ローン控除シミュレーションに借入額・返済期間・金利・住宅の区分・入居年月を入れると、年ごとの年末残高と控除額が表示されます。同じ条件の年ごとの利息は、返済表や金利上昇シミュレーションの年別の返済表で確認できます。
本サイトの返済表は借入れの翌月からの年数で集計するため、暦年の利息とは区切りが異なる場合があります。厳密に暦年で比べたいときは、金融機関の返済予定表で1月から12月の利息を合計してください。
参照した情報
本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。