この記事のポイント
- 控除期間中の繰上返済は、年末残高が減るぶんその後の住宅ローン控除額も減らす
- 3,500万円・35年・0.8%の例で2029年末に300万円を期間短縮型で繰り上げると、利息802,148円減・控除196,900円減
- 年末残高×0.7%が控除限度額を上回っている間は、少しの繰上返済では控除額は変わらない
- 期間短縮型で完済が10年より前になる場合は、実行前に税務署へ確認する
控除期間中の繰上返済は控除額も減らす:計算例
住宅ローン控除の額は年末残高を基に計算するため、控除期間中に繰上返済すると、その後の控除額も減ります。ただし減るのは残高の0.7%相当なので、減る利息と比べてどちらが大きいかを計算してみると判断しやすくなります。
計算例として、2026年3月に入居した新築のZEH水準省エネ住宅(控除期間13年・控除限度額24.5万円、特例対象個人に当たらない場合)で、3,500万円を35年・年0.8%(仮定)で借りたとします。2029年12月の返済の直後に300万円を期間短縮型で繰り上げると、減る利息は802,148円、返済期間は39か月短くなります。一方、2030年から2038年までの控除額の合計は196,900円減ります。差し引きは605,248円です。返済額軽減型なら、減る利息391,564円に対し控除の減少は161,800円でした。
この計算は、控除額をすべて所得税(と住民税)から差し引ける場合を前提にしています。税額が控除額より少ない人は、実際に減る控除の効果も小さくなります。
2026年3月に借入れ、2029年12月の返済の直後に繰り上げた場合です。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| 方法 | 利息の合計 | 毎月の返済額 | 返済期間 |
|---|---|---|---|
| 繰上返済なし | 5,139,674円 | 95,572円 | 35年 |
| 期間短縮型 | 4,337,526円 | 95,572円 | 31年9か月 |
| 返済額軽減型 | 4,748,110円 | 86,527円 | 35年 |
控除額の計算のしくみと「限度額」の境目
国税庁の案内(令和8年4月1日現在法令等)では、控除額は年末残高等に0.7%を掛けた額と控除限度額のいずれか小さい額で、100円未満は切り捨てます。年末残高等は、住宅の取得対価が年末残高より少ない場合はその取得対価です(上の例は取得対価が残高より多い前提です)。
控除限度額24.5万円を0.7%で割ると3,500万円です。年末残高がこれを上回っている間は、控除額は限度額で頭打ちになるため、少し繰り上げても控除額は変わりません。上の例では1年目の年末残高が34,348,111円で、すでに3,500万円を下回っているため、控除額は240,400円と残高に連動しています。このような場合は、繰り上げた分の0.7%相当が毎年の控除から減っていきます。
自分のケースがどちらに当たるかは、年末残高証明書の残高と、入居年・住宅の区分に応じた控除限度額を見れば判断できます。区分ごとの限度額は住宅ローン控除の基本にまとめています。
年ごとの控除額の変化(計算例)
| 年 | 繰上返済なし | 期間短縮型 | 返済額軽減型 |
|---|---|---|---|
| 2029年 | 221,900円 | 221,900円 | 221,900円 |
| 2030年 | 215,600円 | 194,400円 | 195,200円 |
| 2032年 | 202,900円 | 181,400円 | 183,700円 |
| 2035年 | 183,400円 | 161,400円 | 166,100円 |
| 2038年 | 163,500円 | 141,000円 | 148,000円 |
| 13年間の合計 | 2,633,000円 | 2,436,100円 | 2,471,200円 |
期間短縮型のほうが控除の減り方が少し大きいのは、毎月の返済額を変えずに残高を早く減らすためです。それでも減る利息の差の方が大きく、この例では期間短縮型の差し引き効果が上回りました。金利がもっと低い場合は減る利息が小さくなるため、控除の減少とのバランスは変わります。
2026年3月入居の新築ZEH水準省エネ住宅(控除限度額24.5万円)で、繰上返済をしない場合です。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| 年 | 年末残高 | 控除額 |
|---|---|---|
| 2026年 | 34,348,111円 | 240,400円 |
| 2027年 | 33,472,821円 | 234,300円 |
| 2028年 | 32,590,503円 | 228,100円 |
| 2029年 | 31,701,101円 | 221,900円 |
| 2030年 | 30,804,558円 | 215,600円 |
| 2031年 | 29,900,816円 | 209,300円 |
| 2032年 | 28,989,816円 | 202,900円 |
| 2033年 | 28,071,502円 | 196,500円 |
| 2034年 | 27,145,814円 | 190,000円 |
| 2035年 | 26,212,695円 | 183,400円 |
| 2036年 | 25,272,082円 | 176,900円 |
| 2037年 | 24,323,917円 | 170,200円 |
| 2038年 | 23,368,140円 | 163,500円 |
控除期間が終わってから繰り上げる場合との比較
「控除期間が終わるまで繰上返済を待つ」という考え方もあります。同じ例で、13年目の年末(2038年12月)の返済の直後に300万円を期間短縮型で繰り上げると、減る利息は541,333円・37か月短縮で、控除額への影響はありません。
2029年末に繰り上げた場合の差し引き605,248円と比べると、この例では早く繰り上げたほうが約6万円大きい結果でした。ただし、待つ場合は300万円を9年間手元に置いておけるという別の価値があります。どちらが良いかは、金利・控除額を差し引ける税額・手元資金の必要性によって変わるため、自分の条件で両方を計算して比べてください。
「10年以上の返済」の要件と期間短縮型
国税庁は、住宅ローン控除の対象となる借入金の要件の一つとして、償還期間が10年以上の割賦償還であることを挙げています。この10年以上の期間は、借入れをしている期間ではなく、最初の返済のときから返済が終わるときまでの期間を指すと説明されています。
期間短縮型で大きく繰り上げると、返済が終わる時期が早まります。計算例として、1,500万円を20年・年0.8%で借り、2年後に800万円を期間短縮型で繰り上げると、最初の返済から完済までの回数は110回(9年2か月)になります。このように完済時期が10年より前になる場合について、国税庁は「繰上返済等をした場合の償還期間」に関する質疑応答事例や、「臨時弁済により償還期間が10年未満となった場合」のQ&Aを案内しています。該当しそうな繰上返済を考えている場合は、実行前に税務署へ確認してください。本サイトはこの要件の判定を行いません。
実行前に確認する書類と時期
- 年末残高証明書:控除額の計算に使う残高です。繰上返済をした年は、その年の12月31日時点の残高が反映されます。12月に実行するか翌年1月に実行するかで、その年の控除額が変わる場合があります。
- 控除限度額と残りの控除年数:入居年・住宅の区分で決まります。年末残高×0.7%が限度額を超えているかを確認します。
- 所得税額と住民税からの控除:所得税から引ききれない額は、翌年度の住民税から前年分の課税総所得金額等の5%(97,500円が限度)まで控除されます(総務省)。税額が少ない場合、控除が減る影響も小さくなります。
- 返済終了時期:期間短縮型で完済が早まる場合、最初の返済から10年以上の要件との関係を税務署で確認します。
控除と繰上返済をツールで並べて確認する
住宅ローン控除シミュレーションで、借入額・返済期間・金利・住宅の区分・入居年を入力すると、繰上返済をしない場合の年ごとの控除額がわかります(このツールは繰上返済を反映しません)。次に繰上返済シミュレーションで、繰り上げる時期と金額を指定して減る利息を確認し、表示される返済表の年末残高に0.7%を掛けて控除額の変化を見積もってください。そのうえで、税務上の取扱いは税務署に確認するのが確実です。
比べるときは、繰り上げる時期を「控除期間中」と「控除期間の終了後」の二通りで試し、減る利息から減る控除額を差し引いた結果と、手元にお金を残せる期間の違いを並べてください。控除の仕組みそのものは住宅ローン控除の基本で解説しています。
参照した情報
- 国税庁:No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
- 国税庁:No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等
- 総務省:個人住民税の住宅ローン控除(所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方)
本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。