贈与と税

相続時精算課税と住宅取得等資金:非課税の特例との違い

住宅取得等資金の贈与では、贈与者が60歳未満でも相続時精算課税を選べる特例があります。非課税の特例との要件の違い、併用の順番、住宅ローン控除の取得対価への影響を5200万円の住宅の例で整理します。

この記事のポイント

  • 住宅取得等資金の贈与なら、令和8年末までは贈与者が60歳未満でも相続時精算課税を選べます。
  • 非課税の特例を受ける場合は、その適用後に残る住宅取得等資金があるときに限り、この特例を使えます。
  • 相続時精算課税選択の特例には所得要件がなく、床面積の上限もありません。
  • 住宅ローン控除では、非課税と相続時精算課税の両方の特例の額を取得対価から差し引きます。

住宅資金なら、贈与者が60歳未満でも相続時精算課税を選べる

国税庁 No.4503(令和8年4月1日現在法令等)によると、令和8年12月31日までに、父母や祖父母などから自分が住む住宅の新築・取得・増改築等のための資金(住宅取得等資金)の贈与を受け、一定の要件を満たす場合は、贈与者がその年の1月1日に60歳未満であっても相続時精算課税を選ぶことができます。

住宅取得等資金の贈与税の非課税(No.4508)とは別の特例で、非課税の特例を受ける場合は、その適用後に贈与税の課税価格に入る住宅取得等資金がある場合に限ってこの特例が使えます。計算例として、省エネ等住宅(5200万円)を買う際に親から1500万円の贈与を受けると、1000万円は非課税の特例の対象となり、残る500万円についてこの特例で相続時精算課税を選べるかを検討する、という順番になります。借入額は3700万円で、35年・金利1%(仮定)なら月々104,446円です。

非課税の特例と相続時精算課税の特例の要件を比べる

非課税の特例(No.4508)と相続時精算課税選択の特例(No.4503)の主な違い
項目非課税の特例相続時精算課税選択の特例
対象となる贈与令和6年1月1日〜令和8年12月31日の贈与令和8年12月31日までの贈与
受贈者贈与者の直系卑属贈与者の直系卑属である推定相続人または孫
受贈者の年齢贈与を受けた年の1月1日に18歳以上同じ
所得要件合計所得金額2,000万円以下(40㎡以上50㎡未満は1,000万円以下)なし
床面積40㎡以上240㎡以下40㎡以上(上限なし)
増改築等の費用100万円以上(2分の1以上が居住部分)100万円以上
申告翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告同じ期間に申告し、相続時精算課税選択届出書も提出

相続時精算課税の特例は、所得要件がなく、床面積の上限もない点が非課税の特例と異なります。240㎡を超える住宅や、合計所得金額が2,000万円を超える人は、非課税の特例は使えませんが、こちらの特例は要件次第で検討の余地があります。

相続時精算課税そのものの仕組みは別に確認する

この特例は、住宅取得等資金の贈与について「贈与者の年齢の条件を外して相続時精算課税を選べる」というものです。相続時精算課税そのものがどのような制度で、選んだあとの贈与や相続のときにどう計算されるかは、国税庁の別の説明に定められています。

相続時精算課税は、その名称のとおり将来の相続とも関係する制度です。本サイトでは住宅ローンの返済額と住宅ローン控除への影響を中心に扱い、相続時精算課税を選ぶべきかどうかの判断材料は示しません。非課税の特例の範囲(省エネ等住宅で1,000万円、それ以外で500万円)に収まる贈与なら、この特例の対象になる金額は生じません。家族全体の相続の見通しを含めて、税務署や税理士に相談したうえで決めてください。

共通して求められる住宅と居住の要件

  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、資金の全額を充てて住宅の新築等をすること。
  • 受贈者が住宅を所有する(共有持分を含む)ことになること。
  • 翌年3月15日までに住むか、同日後遅滞なく住むことが確実と見込まれること。翌年12月31日までに住んでいなければ、原則として特例は受けられず修正申告が必要です。
  • 配偶者や親族など特別の関係がある人から住宅を取得したものなどでないこと。
  • 取得する中古住宅は、昭和57年1月1日以後の建築、耐震基準への適合の証明、または翌年3月15日までの耐震改修による適合の証明のいずれかに当たること。

どちらの特例も、贈与を受けた時に日本国内に住所があることが原則です(一定の例外あり)。登記事項証明書は、贈与税の申告書に不動産番号を記載するなどの方法で添付を省略できます。

贈与の額による借入額と返済額の違い

5200万円の住宅を、贈与なし・1000万円・1500万円の3つのケースで比べると、借入額と返済の負担は次のようになります。

物件価格5200万円・35年・金利1%・元利均等の場合(諸費用は含めない)
贈与の額借入額月々の返済額総返済額に含まれる利息
500万円4700万円132,675円8,722,888円
1000万円(非課税の範囲)4200万円118,560円7,794,941円
1500万円(非課税1000万円+精算課税500万円)3700万円104,446円6,866,921円

贈与額が500万円増えるごとに、月々の返済額は約1.4万円、利息は約93万円少なくなります。どこまで贈与を受けるかは返済の負担だけでなく、贈与者の資産や将来の相続にもかかわるため、上の数字は判断材料の一つとして使ってください。金利1%は計算のための仮定で、同じ借入額の差でも、金利が高いほど利息の差は大きくなります。物件価格には諸費用を含めていないため、実際の借入額は諸費用の払い方によっても変わります。

5200万円の住宅で贈与額別の毎月の返済額
  1. 贈与500万円・4700万円132,675円
  2. 贈与1000万円・4200万円118,560円
  3. 贈与1500万円・3700万円104,446円

35年・金利1%・元利均等。物件価格から贈与額を引いた額を借りる場合(諸費用は含めない)。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。

グラフの数値を表で見る
5200万円の住宅で贈与額別の毎月の返済額
条件毎月の返済額総返済額利息の合計
贈与500万円・4700万円132,675円55,722,888円8,722,888円
贈与1000万円・4200万円118,560円49,794,941円7,794,941円
贈与1500万円・3700万円104,446円43,866,921円6,866,921円

住宅ローン控除では両方の特例の額を取得対価から差し引く

住宅ローン控除の計算では、住宅取得等資金の非課税の特例と相続時精算課税選択の特例を受けた資金の額を、住宅の取得対価から差し引きます(国税庁 No.1211-1)。上の1500万円の例なら、取得対価5200万円から1500万円を差し引いた3700万円が、控除の基準となる取得対価です。

借入額も3700万円なので、年末残高は必ず取得対価以下となり、取得対価が上限になることはありません。2026年4月にZEH水準省エネ住宅として入居した場合(35年・金利1%)、13年間の控除額の合計は2,793,000円です。ただし、借入額を取得対価−贈与額より多くした場合は、その超える部分は控除の計算に入りません。確定申告では、贈与税の申告書の写しなど住宅取得等資金の額を証する書類も添付します。

贈与額を変えて試算する

贈与の額ごとの借入額を金利上昇シミュレーションに入れると、月々の返済額と残りの総額を比べられます。住宅ローン控除は住宅ローン控除シミュレーションで、「住宅の取得対価」に贈与分を差し引いた額を入れて確認してください。

月々の返済予算から借入額を逆算するなら返済予算シミュレーションが使えます。非課税の特例の詳しい要件は住宅取得等資金の贈与税の非課税、援助額による返済の違いは親からの援助と返済額で説明しています。

参照した情報

本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。